特別企画報告「医師の働き方改革・2024問題」
2019.11.15

チーム医療推進委員会・委員長 坂本喜三郎(静岡県立こども病院)
座長・坂本から“人類史上前例のない少子高齢化と生産年齢人口の減少が進む日本で働き方改革が叫ばれている背景とその流れに沿った医療領域三位一体改革(働き方改革、医師偏在対策、地域医療構想)”についての俯瞰的まとめがあり、他領域に比べ時間外が圧倒的に多い胸部外科医・その働き方改革の着地点をどう設定すべきかを問う形で特別企画が始まった。各講演と総合討論の内容を座長目線で纏め、報告とさせて頂く。
- ① 馬場 秀夫先生(外科学会労働環境改善委員長)
- “若手医師が外科、産婦人科などの勤務時間の長い科を選択しない傾向”と“20代、30代外科医の4割は3000時間を超えている現状”を提示。長時間労働是正に向けての病院と医師の意識改革のもと、タスクシフト、特にパッケージ化研修・特定行為限定区分対応看護師の養成とその活用について報告。
- ② 加藤 琢真先生(厚労省) 資料
- 長時間労働に伴う悪影響(連続勤務時間延伸に伴う作業効率悪化と短時間睡眠に伴う作業Qualityの劣化など)を例示し、働き方改革の意義を説明。個別情報として、宿日直・自己研鑽、(B),(C)時間外特例、特定行為パッケージ化研修推進について厚労省の考え方を提示。
- ③ 高木 靖先生(藤田衛生大学)
- 2012年から始めた大学院型研修(2年間)・特定行為全21区分対応看護師Nurse Practitioner(NP)の養成経験と卒業生41名の現状を報告。特に、同大心臓外科に所属する2名の働きぶりを詳細に提示し、NP導入のメリットを報告。
- ④ 安藤 秀明先生(秋田大学)
- 医師不足とその偏在に直面している秋田県の現状と近未来の課題「急性期病院の集約化に伴う患者集中と慢性期病院の医療の高度化」を提示。対応策として“両方の現場でシームレスに対応可能な全区分対応型NP”の養成を推進していくと報告。
- ⑤ 森田 茂樹先生(九州医療センター)
- 経営者の視点で医師の労働時間を検討し、医師の労働は“時間短縮困難な手術、処置・検査”が多くを占め、特に胸部外科は手術時間が長い実態を提示。病院としてタスクシフトを進めようにも看護師配置基準と人件費の壁に加えて人員確保の困難さ(看護助手は応募者もない)があり、危機的と報告。
- 『総合討論』
- 特定行為全区分対応NPが実際に働いている藤田医科大学と九州医療センターからは「NPの存在意義とその有効性」が、秋田大学からは地方医療を支えるための全区分対応NP養成の意味が、改めて論じられた。全区分対応NP、パッケージ化研修・限定区分対応看護師について参加者に問うたところ、9割が“全区分対応NPを導入したい”と挙手した。フロアーから『現在の方針で働き方改革を進めると、日本が誇る“患者に貢献できる胸部外科医療の質”(短期的視点は勿論、教育も含めた長期的視点でも)を保てるのか懸念がある』とのコメント(元日本心臓血管外科学会理事長・高本先生)があった。