理事長挨拶
理事長就任挨拶
一般社団法人日本胸部外科学会
理事長 志水 秀行(慶應義塾大学医学部 外科学(心臓血管))
日本胸部外科学会の未来のために
このたび、日本胸部外科学会の理事長に就任させていただきました。日本胸部外科学会に対する皆様の多大なるご支援に感謝申し上げますと共に、理事長としての重責に身が引き締まる思いです。
日本胸部外科学会は1948年に創立され、学術研究に関する事業を通して国内外の胸部外科学の進歩と普及に貢献し、学術文化の発展と国民の医療と福祉に寄与するという目的を達成するために活動しています。近年、高度化・多様化する医療現場において、胸部外科医に求められる役割はますます重要になっています。本学会が山積する課題を克服し、次なる時代を切り拓いていくために何をすべきかを真摯に考え、皆様と共に取り組んでまいりたいと考えております。
- 臨床・研究の両面における学術的発展の推進
学術的貢献は学会にとって最も重要な使命であり、その中で学術集会は日常臨床で多忙を極める多くの胸部外科医が最新情報の収集や知識の整理を効率よく行う場として、また、会員同士の交流の場として重要です。新たな会長制度は順調に歩みを進め、2026年からは完全3分野会長制に移行します。3会長のリーダーシップのもとで、これまで以上に学術集会の活性化が図られると期待しています。一方で、学術集会開催においては財務上の課題を含め学会本体と学術集会事務局の強い連携を軸にした運営の必要性が高まっています。さまざまな課題に対し十分な検証、議論を行い、会長の独自性を重視しつつ、一層魅力的で安定的な学術集会運営を目指したいと考えます。
本学会の学術誌であるGTCSは胸部外科学の情報発信の場として重要な役割を担っており、2022年にケースレポート誌として創刊したGTCCも着実に実績を積み上げつつあります。学会の発信力、学術レベルの向上、国際化へのさらなる寄与を目指します。
心臓血管外科領域のAATSとの間で行われているAortic Symposium、Mitral Conclaveに加え、呼吸器外科領域でもInternational Thoracic Surgical Oncology Summit (ITSOS)との交流が開始されました。既に構築された欧米の主要学会のパートナーシップ学会として、さらにアジア諸国との交流も視野に入れて、国際化の推進を継続してまいります。 - 若手育成と教育体制の整備
働き方改革の流れの中で、質の高い教育と持続可能なキャリア形成のための環境整備を行うことは、わが国の医療体制の将来に直結する重要課題であり急務といえます。環境変化が加速し正確な未来予測が困難な現状においては、個別事案の対応に加え、未来を託せる次世代リーダーを育成することもきわめて重要です。
専門医認定機構、合同委員会、関連学会等と連携して教育プログラムの進化を図り、サマースクール、地方会発表、Case Presentation Award、JATSフェローシップ留学支援、JATS-NEXT annual conference等、各段階における育成環境を一層充実させ、若者を元気づけ主体性の涵養をはかります。彼らのニーズを適切に意思決定に反映させること、研究の価値を正しく評価する施策にも取り組みたいと考えます。diversity推進にも積極的に取り組みます。 - 医療環境の整備
時代の要請・時代の変化に応じた学会運営も重要です。「胸部・心臓・血管外科領域特定行為研修修了看護師登録制度」がスタートし、会員支援と医療の質の担保を両立させるための取り組みが開始されました。今後、登録者増加を図るとともに、他職種との連携、タスクシフト・シェアの拡大、DXの導入など、医療環境の整備にも貢献したいと考えます。施設の拠点化、地域における急性期医療体制の構築、医療安全教育・支援などの議論もしっかりと進め、会員の身体的、心理的安全性を保つ仕組みづくりに貢献し、われわれが先駆けになって医療界全体に恩恵をもたらしたいと思います。 - 信頼構築と情報発信
さまざまな情報が錯綜する現代において、社会に対して責任をもって正しい情報を発信することは学会として取り組むべき使命の1つです。JATS annual reportは30年以上3分野すべてで95%以上の集計率を誇り、他国のいかなるデータベースも比肩できない質の高いものであり、引き続き、NCD、JCVSDとしっかりと連携を図ってまいります。
次々に登場するテクノロジーの中から価値あるものを選択し迅速かつ安全に普及させること、革新的な取り組みを社会に受け入れられる形で展開していくためには、国民との信頼関係の醸成が不可欠です。市民への分かりやすい情報発信、メディア対応等、社会との対話を怠らず、患者さんの視点に立って透明性と説明責任を大切にする姿勢を堅持することで、学会の公共性と存在意義をより高めていきたいと考えます。国、自治体、団体に対する働き掛けを行う際にも、会員数約8,000名という大きな専門医集団であることは大きなメリットであり、この強みを活かし、関連学会とも連携し、引き続き、社会に貢献したいと考えます。 - ブランディング
本学会には、英文学会誌(GTCS、GTCC)、地方会の存在、安定した財政基盤、充実した教育コンテンツ(JATS academy等)、国際交流の実績、スカラーシップなど、多数の優れたコンテンツがあります。今後もこれらをしっかりと活かし、発信し、本学会の価値をさらに高めたいと考えます。 - 安定した基盤の確保
安定した学術集会運営を行うためにも、統合学会として関連学会との連携を強化するうえでも、事務局機能の一層の充実、安定した基盤づくりに努めます。
日本胸部外科学会は、これからも3分野それぞれの個性を尊重しつつ協調することで発展を目指すべきと考えます。さまざまな事業を3分野の密な連携のもとで、各委員会を中心として円滑かつスピード感をもって進めていくために、3分野それぞれから副理事長を任命し、対話による運営を強化することと致しました。また、ブランディング委員会、ダイバーシティ推進委員会も創設しました。私自身は、これまでの実務経験と、これまでに培ってきた幅広い人脈を最大限に生かし、直面する課題に真摯に向き合い解決を図るとともに、本学会をこれまで以上に明るく開かれた組織とするために貢献したいと考えています。
伝統ある日本胸部外科学会で仕事をさせて頂くことを誇りとし、先生方と共に、胸部外科の明るい未来を切り拓くことができれば幸いです。