堀 大治郎
堀 大治郎
自治医科大学附属さいたま医療センター 心臓血管外科

若手医師の立場から

初期研修から心臓血管外科へ

私は現在、自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科に勤務する卒後9年目です。卒後は初期臨床研修制度が導入され2年目であったため、研修先として救急医療で有名であった湘南鎌倉総合病院に就職しました。初期臨床研修制度では2年間で内科から外科、さらに小児科、産婦人科など様々な科において臨床研修を行いますが、湘南鎌倉総合病院でのカリキュラムでは救急医療を2年間通じておこなってきました。通常の日常生活をおくっている人が急変し、運び込まれてくる救急医療では、的確な診断が患者様の予後につながり、特に脳神経、心血管系のトラブルは専門家へのスムーズなコンサルテーションが要求されました。救急外来では数多くの急性大動脈解離症例を経験しましたが、診察中に急変することも多く、多くの患者様がそのまま手術室に運び込まれました。そのような患者様を手術で治療し、無事退院させる心臓血管外科医と関わるようになり、24時間365日、常に冷静に対応する心臓血管外科医のMotivationの高さに魅力を感じました。

初期研修医時代は内科系、外科系にどちらに興味があるかとよく聞かれましたが、どちらもやりがいがあると感じました。どちらに関してもGuide Lineが作成され、治療方針も決まっておりますが、異なるところは外科における治療は薬ではなく、術者がもつ技術・技量により成績が大きく異なることにあると思います。特に良性疾患を扱う心臓血管外科では手術手技次第で患者のQOLが左右され、術者の責任は重大です。責任が重大であるからこそやりがいを感じます。初期研修が終わった3年目より心臓血管外科修練医として自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科に入局しました。

心臓血管外科入局して

日本の専門医制度では心臓血管外科専門医を取得するためには外科専門医を取得する必要があります。初期研修を含めた4年間は外科専門医取得のため一般外科での修練、麻酔科、さらに集中治療室において臨床研修を重ねてきましたが、5年目より本格的に心臓血管外科の修錬が始まりました。初めは静脈瘤からはじまり、次に透析用シャント、さらにF-F Bypass、F-P Bypassと続き、腹部大動脈瘤手術を担当するようになりました。6年目になると大動脈弁置換術、僧帽弁置換術の執刀医など、経験範囲が広がり、7、8年目にはCABGや僧帽弁形成術さらに弓部大動脈置換術や急性大動脈解離の手術も経験するようになりました。さらに低侵襲手術として発展したステントグラフトは実施医として、そして現在では指導医として治療に携わる事ができるようになりました。昨年度に行われた心臓血管外科専門医試験にも無事合格し、今年からは心臓血管外科専門医として責任を持ち、診療に携わっていきたいと思っております。

今後の心臓血管外科

2012年10月にBarcelonaで行われたヨーロッパ胸部心臓血管外科学会に参加してきました。今海外で一番勢いがあるヨーロッパではTAVRやMitral Clippingなどカテーテル操作を中心とした低侵襲手術が数多く行われております。日本でもHybrid手術を導入する施設が多く、ステントグラフトを始めとした低侵襲手術が今後の大きな課題となります。カテーテル操作技術も今後の心臓血管外科医には必要となる時代に突入しており、これからも様々な発展が期待される分野であると思われます。カテーテル技術やOpen手術の技術を勉強し、治療法のOptionを増やし、一人一人の患者様に対しその患者様にあったOrder Made治療を行えるのも今後の心臓血管外科の魅力ではないかと思います。