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2006年学術調査結果

はじめに

日本胸部外科学会は、1986年から20年以上にわたり、学会会員の施設を対象に、心臓外科(胸部大動脈手術を含む)、呼吸器外科、食道外科の年間手術件数を調査してきました。当初は術式別の手術件数のみでしたが、後半は死亡件数の調査も行っており、集計結果を機関誌の日本胸部外科学会雑誌に発表してきました。最近では3領域ともに90~95%の高い回収率であり、本邦での胸部外科領域の手術をほぼ網羅していると考えています。なお、邦文の日本胸部外科学会雑誌から、海外へ情報を発信するため英文誌となっており、図書館などを介せば入手は可能ですが、専門領域の手術で疾患(病型)、手術術式など詳細に分類していますので、一般の方々には難解な点があろうかと思われます。そこで、社会に向けて情報公開を進めるため、学会ホームページに代表的疾患の手術成績を日本語で理解しやすい形にして掲載することにしました。
心臓外科(胸部大動脈手術を含む)、呼吸器外科、食道外科の3領域に分けて掲載しています。
それぞれの領域の手術件数の年次推移、疾患別の変化をグラフで示しました。

3領域の術式別の集計は表にしましたが、死亡については手術後30日以内の死亡と病院死亡(術後入院中の死亡すべてを含む)にわけて記載しています。

心臓外科

心臓外科領域での手術数は年々増加し、調査を開始した1980年代後半の総数2万件から、2002年では5万例を越え、2006年には約54000件となりました。これは全体の約1/3を占める虚血性心疾患に対する手術(主に冠動脈バイパス術)が増加してきたことが大きく影響しています。なお、2002年以降、冠動脈バイパス術はカテーテル治療(ステント治療)の波及で、漸減傾向にあります。弁膜症手術については、リウマチ性弁膜症は減少しましたが、高齢化に伴う変性性の大動脈弁狭窄や僧帽弁閉鎖不全が増加しており、2006年には約15000件の手術が施行されました。また、年々増加しているのは胸部大動脈手術で、調査開始当初の1200件から9000件を越えるまでに増加しています。先天性心疾患に対する手術は、出生率にも影響していますが、約 8000~9500件で推移しています。

先天性心疾患、弁膜症、冠動脈疾患(虚血性心疾患)、胸部大動脈疾患、その他と分類しています。
心臓外科 2006年学術調査結果

呼吸器外科(肺・縦隔・胸膜疾患等の手術を担当)

この領域での手術数は年々増加し、2006年では6万件に迫っています。これは全体の45%を占める肺癌手術が増加していることによると思われ、肺癌予防のための効果的手段が講じられない限り日本人口の高齢化に伴ってこの傾向は続いていくでしょう。

肺癌では切除例の67%が、たばことの関連が比較的少なく女性に多い腺癌でした。胸腔鏡による手術(VATS)が年々増加し、肺の一部をとる部分切除の 70%、肺癌の定型手術である肺葉切除では41%がVATSにより行われています。肺葉切除の手術死亡(術後30日以内の死亡)は0.4%と引き続き低い値でした。これは欧米の報告と比べても非常に低い値で誇るべきものです。これは手術の巧拙とともに、適切な症例の選択と、優秀な術後管理など多くの要因により達成されています。

転移性肺腫瘍手術の47.1%は大腸癌からの転移でした。胸腺腫(重症筋無力症合併例も含む)は全体で1440例と前年に比べ増加しています。気胸は呼吸器外科全体の21%でした。脳死ドナーの数が少ないことにより2006年の肺移植は13例と非常に少ない数字でした。本邦では生体肺移植が脳死肺移植より多いことが特徴です。

胸腔鏡手術は33,495例と増加して2006年の呼吸器外科手術全体の56.6%を占めています。この手術により通常開胸と同様の成績が得られるかどうかをこれから検証して行く予定です。
呼吸器外科 2006年学術調査結果

食道

高齢者人口の増加に伴いこの領域の手術は今後増加する事がみこまれます。また、医療技術に進歩により、消化器内視鏡や胸腔鏡を用いたいわゆる対腔内手術が普及し、患者さんへの手術侵襲の軽減が期待されます。
食道癌治療には、化学放射線療法の進歩により非手術的治療、集学的治療が行われる様になりましたが、患者さんの数が最も多い進行度II、IIIの患者さんに対しては依然手術療法が中心であります。食道癌に対する胸腔鏡手術は本邦では1995年より開始され、次第に増加し、2006年には年間700例を越える様になりました。また、胃食道逆流症、アカラシアなどの食道良性疾患に対しても内視鏡手術が広く行われる様になりました。
食道 2006年学術調査結果