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成人先天性心疾患

キーワード

成人先天性心疾患 ファロー四徴症 心房中隔欠損症(ASD) 三尖弁閉鎖不全症 肺動脈弁狭窄症・閉鎖不全症 不整脈 妊娠出産 再手術 右室流出路再建術 専門外来 セカンドオピニオン

  1. 成人先天性心疾患とは?
  2. どういう問題がありますか?
  3. どんな治療がありますか?
  4. 手術の危険性は?
  5. どこに相談したら良いですか?

1.成人先天性心疾患とは?

先天性心疾患とは、生まれつき心臓や大血管に何らかの異常を持っている状態のことを言います。出生100人に1人と比較的多い病気です。以前は、診断が遅れたり、治療が十分でなかったりで、なかなか成人に達することが出来ない方もいましたが、近年の医療の進歩により、先天性心疾患を生まれ持った約90%の方が成人に達するようになりました。このように過去に手術された方や、手術を受けずに経過観察されている方が成人となっている場合、また成人になってから新たに生まれつきの心臓病をもっていると診断された方も含めて、成人先天性心疾患に罹患していると言います。
現在、日本の先天性心疾患の患者さんは約70万人で、そのうち約40万人が成人に達していると思われています。決して稀な病気ではありません。

(主な対象疾患名)

心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、房室中隔欠損症、部分肺静脈還流異常症、ファロー四徴症、両大血管右室起始症、大血管転位症、肺動脈狭窄・閉鎖症、総動脈幹症、総肺静脈還流異常症、三尖弁閉鎖症、単心室症、エプスタイン奇形、左心低形成症候群、修正大血管転位症、大動脈縮窄・離断症など

2.どういう問題がありますか?

多くの場合、幼少期に手術を受け何の問題もなく今後も心配の無い方もいますが、以前は将来問題ないと思われていた先天性心疾患が実は将来的に問題を起こしてくることがあるということがだんだん分かってきました。他の成人心疾患と異なり、多くの場合は症状をなかなか自覚しない、もしくは慣れてしまっていることがあり、症状が悪化した時にはかなり病状が進んでいることも稀ではありません。また、女性の場合、妊娠・出産で状態が変化し、母体はもちろん赤ちゃんに影響をおよぼす事があります。
特に注意していただきたいのは、手術された当時は手術すれば完全もしくはほとんど治ると思われていたため、"根治術"(例;"ファロー四徴症根治術"など)という手術名が使われ、これをご家族の方やご本人が完全に病気が治ったと思ってしまい、適切なフォローを受けておられない場合があります。
また、これは医療者側の問題でもありますが、先天性心疾患をお持ちの方が定期的に医療機関に通院されていたとしても、診る側の医師がたとえ心臓が専門の医師(循環器医)でも先天性心疾患の診療には不慣れな医師がほとんどであり、適切な診療がされていないことも考えられます。

参考のために、典型的な一例を紹介します。

◯30歳代女性

診断:

ファロー四徴症修復(根治)術後の機能障害

病歴:

生後チアノーゼあり、大学病院での検査にてファロー四徴症診断。
乳児期にブラロックタウジッヒシャント手術を受ける。3歳時にファロー四徴症根治術を受ける。手術した医師から根治術をしたと両親へ説明される。
その後は大学病院小児科通院。学校では運動制限なし。吹奏楽部で活動。
母親からは、心臓は全部治したと手術した医者に言われたから心配ないと言われる。高校卒業後、他県の会社に就職。特に症状が無く、社会人になって小児科に通うことに抵抗があり通院中断。会社の検診でレントゲン写真異常を指摘されるが、幼少期の手術のせいと思い精密検査は受けていなかった。
最近、長くは続かない動悸を自覚。交際中の男性がおり結婚の話も出て、妊娠・出産が可能かどうか心配になり、近くの循環器科受診。大学病院紹介。精密検査にて、肺動脈弁逆流とそれによる右心室の拡大を認め、妊娠・出産のためには肺動脈弁置換術(肺動脈弁を人工弁に取り替える手術)をしたほうが良い、と説明される。

(この症例の問題点)

  • 「根治術をした」と言われたため、ご家族が"心臓は全部治った"と思っている。
  • 心臓に関しての通院を中断してしまった。
  • 特に大きな症状が無くても病気が進行している場合がある。
  • 女性の場合、妊娠・出産で病態が変化することがある。

3.どんな治療がありますか?

ここでは主に外科的な治療についてお話します。
基本的には、心臓に構造的な異常があり、それを修復もしくは人工物に置き換えることが外科的治療です。術前の心臓の機能異常が長く続いていた場合不整脈を伴うことがあり、その場合でも電気生理的な検査や治療(アブレーション)を組み合わせながら、外科的に治療(メイズ手術や焼灼術)を行うことがあります。近年では、血管の中にカテーテルを通して治療するカテーテル治療も行われてきています。
もちろん、これらの治療に伴わせて、心不全治療薬や抗凝固薬、抗不整脈薬などでの薬物的治療が続けられることも少なくありません。

4.手術の危険性は?

疾患や術前の全身状態によって手術の危険度は異なります。多くの場合再手術例となりますので、心臓や大血管と周囲組織との癒着の剥離のため、特別な準備や作業が必要となり、手術時間が長くなったり、輸血量が多くなったりします。また、成人特有の病気(動脈硬化や糖尿病、腎臓病など)にも注意が必要です。

5.どこに相談したら良いですか?

定期的に心臓について診てもらっている医師がおり、その医師が先天性心疾患に精通した医師であれば、そちらでの診療を継続するのが良いでしょう。他の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞きたい等の希望があれば遠慮せずその希望を医師にお伝え下さい。
定期的に診てもらっている医師がいても、その医師が先天性心疾患の専門でない場合は、まずその医師に専門の医師への受診の希望をお伝え下さい。専門の医師は多くの場合、手術された病院の小児科、心臓血管外科もしくは循環器科にいます。
最近では、多くの都道府県で成人先天性心疾患を専門とした外来(日本成人先天性心疾患学会HP中の施設一覧;http://www.jsachd.org/disease/establishment.html )があります。
定期的に通院していることがない場合は、直接上記の施設にご相談されるか、お近くの循環器科を受診し専門外来への受診の希望をお伝え下さい。