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不整脈に対する外科治療

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不整脈はもっとも多い心臓病の1つです。ほとんどが薬物によって治療されるため、循環器内科の領域になっていますが、外科と内科が協力して治療にあたる不整脈も少なくありません。まずは、不整脈の種類について説明し、その後、それぞれの治療の内容について、特に外科的治療を中心に説明します。

  1. 不整脈の種類
  2. 不整脈の治療方法

1.不整脈の種類

不整脈には、脈が不規則になる不整脈、脈の速さが正常より遅くなる徐脈性不整脈と速くなる頻脈性不整脈があります。

1-1 脈が不規則になる不整脈

心臓は通常は規則正しいリズムで働いていますが、心房細動という状態になると心臓のリズムは不規則になります。心房細動になると心臓の機能そのものが低下し、心房に血液が淀むため血液が固まってしまい、その固まりが脳などの重要な臓器の血管を閉塞してしまう血栓塞栓症という病気を併発し易くなります。心房細動は年齢とともに増加しますが、心臓弁膜症などの心臓の病気も心房細動の発生と関係しています。心房細動は先ず、薬物で治療しますが、最近では手術によって心房細動を治療する方法が開発されています。

1-2 脈が遅くなる不整脈(徐脈性不整脈)

正常の心臓は1分間におよそ50から100回規則正しいリズムで拍動しています。心臓の洞結節というところの機能によって心臓のリズムは刻まれ、心房、心室まで刺激が伝わりますが、様々な原因により洞結節のリズムが低下したり(洞徐脈)、止まったり(洞停止)、また洞結節のリズムが正常でも心房への中継がうまく行われなくなると(洞房ブロック)、脈拍数は低下します。このように洞結節の機能低下により脈拍数が低下する病気を洞機能不全症候群といいます。
また、心房と心室間にある房室結節やそれに続くヒス束に何らかの原因で障害が起きると、洞結節のリズムが正常に心室に伝わらなくなります。例えば2回に1回しか心房から心室へ伝わらなくなると、毎分60回の心房の興奮が、心室に伝わるのは毎分30回となり、高度の徐脈(高度房室ブロック)を生じます。重症になると心房のリズムが全く心室に伝わらなくなり(完全房室ブロック)、場合によっては生命に危険を生じる事もあります。
脈が不規則になる不整脈である心房細動でも高度の徐脈を合併する場合があります。失神、痙攣、眼前暗黒間、目眩、息切れ、易疲労感などの症状、あるいは心不全があり、それが洞機能不全症候群、高度房室ブロック、完全房室ブロック、徐脈性心房細動に基づく徐脈によるものであることが確認された場合は心臓ペースメーカーの植込みの適応になります。

1-3 脈が速くなる不整脈(頻脈性不整脈)

通常、心臓は1分間におよそ50から100回規則正しいリズムで拍動していますが、それ以上に脈が速くなる不整脈を頻脈性不整脈といいます。その中で、心房や房室結節の領域に原因のある不整脈を上室性の頻脈性不整脈といい、WPW症候群(房室結節やヒス束以外に、心室と心房とを結ぶ副伝導路があるもの)、心房粗動、心房細動などが挙げられます。これらの不整脈は、電気的に不整脈の発生起源がわかるようになり、薬物治療と共にカテーテル治療や外科手術による治療が行われるようになっています。また、心室に原因のある不整脈を心室性の頻脈性不整脈といい、心室頻拍、心室細動があります。これらは不整脈のなかで最も重篤なもので、急激に血圧が低下したり、心臓のポンプ機能が直ちになくなると心停止となります。心停止となった場合は脈拍も触れず、血圧も測定不能になり、意識を消失することもあります。この場合には直ちに心臓マッサージなどの心肺蘇生術と心臓電気ショックが必要です。心室頻拍、心室細動をきたす心臓の病気としては急性心筋梗塞や高度の狭心症などの虚血性心疾患が最も多く、その他としては心筋症、心筋炎、弁膜症などでもこの重篤な不整脈が起ることがあります。また心室細動は心電図でブルガダ型の心電図を示す疾患(ブルガダ症候群)、QT延長(QT延長症候群)の所見がある場合にも生じる危険が高いことが分かっています。これらの不整脈に対しては薬物治療が行なわれますが、心室頻拍、心室細動は1度でも起れば致命的となる不整脈ですから、薬物治療と共に突然死の予防のため、植込み型除細動器の植込みが勧められます。また、電気的に不整脈の原因部位がわかるような場合は、カテーテル治療や外科手術による治療もあわせて考慮されます。

2.不整脈の治療方法

不整脈の治療として、薬物治療の他に、カテーテル治療、デバイス治療、外科手術による治療があり、不整脈の種類により、最適な治療法が選択されます。

2-1 カテーテル治療

カテーテル治療として頻脈性不整脈に対するカテーテルアブレーションが挙げられます。専用のアブレーションカテーテル(細い管)を下肢や上肢の血管から挿入し、レントゲン撮影で透視しながら、電気的に異常な部位(不整脈の原因部位)を探し、カテーテル先端に接した組織に高周波による熱エネルギーを加えて壊死を作成(電気的焼灼)することにより、頻脈を根治する治療法です。上室性の頻脈性不整脈、心房細動 心室性の頻脈性不整脈、心室頻拍などの治療に適応され、通常の症例では、翌日から歩行可能で、短期間の入院で施行可能です。しかし、成功率は90%以上の高いものから成功率が低く、適用しにくい場合もあります。

2-2 デバイス治療

デバイス治療として、ペースメーカー植込みと植込み型除細動器が挙げられます。

ペースメーカー植込み

先に挙げた脈が遅くなる不整脈(徐脈)において、脈の速さが遅くなりすぎないようにするために装着されます。ペースメーカーは手術によって、体内に植え込むまれ、基本的に電池と制御回路が一体となった、ジェネレーターと呼ばれる部分と、ここからの刺激を心臓に伝える電極リードと呼ばれる線の部分より構成されています。心臓の脈が、一定時間以上なくなったときに、自動的に電気刺激を送って心臓を拍動させ、脈の数を維持することになります。手術は、局所麻酔を行い、鎖骨の下の皮膚を切開して、前胸部の皮下に小さなポケットをつくります。(図1)そこにジェネレーターを入れ、電極リード線を鎖骨下静脈から心臓の内部まで送り込みます。(図2)手術は2時間ほどで終わりますが、手術後の数日間は、リード線がまだ固定されていない状態なので、ペースメーカーを入れた腕は、あまり激しく動かさないようにします。翌日から次第に起き上がることが可能となり、3~4日後には歩行可能となります。術後7日目頃に傷の状態を確認し、全て終了となります。


図1


図2

植込み型除細動器

心室頻拍や心室細動などの致死性心室性不整脈(発作を放置しておくと命に関わる危険が高い不整脈)を自動的に関知して治療をするものです。ペースメーカーより少し大きな除細動器本体と、右心室へ挿入する電極からなります。除細動の機能とともにペースメーカーの機能を持っています。除細動器本体はペースメーカーと同じように前胸部の皮下、または筋肉下に植込まれます。心室細動、心室頻拍などの不整脈が起きた時には、除細動器が自動的に診断して除細動(心臓電気ショック)をし、突然死を予防します。

2-3 外科手術による治療

不整脈に対する外科手術は、心室頻拍、頻脈性心房粗細動、WPW症候群など、さまざまな不整脈に対しての根治療法として施行されてきました。近年、不整脈の電気生理学的検査やカテーテルアブレーションなどの進歩にともない、不整脈の外科手術の適応は、他の心臓手術を同時に行う場合やカテーテルアブレーションの施行困難例または不成功例に限られるようになっています。
現在、主に行われている外科的治療は、心房細動に対する手術(メイズ手術)と心室頻拍に対する手術です。

心房細動に対する手術(メイズ手術)

心房細動は先に話しましたように心臓のリズムが不規則になる不整脈です。心房細動の原因は不明な点も残されていますが、心房内に早い異常な興奮が生じ、心室の脈も不規則になってしまうものです。心房細動になると、心臓の機能そのものが低下し、脳などの塞栓症という病気を併発し易くなります。心房細動の治療の目標は、規則正しい脈に回復させる、心機能を回復させる、脳梗塞などの血栓塞栓症のリスクをなくすることにあります。
そこで開発されたのが、メイズ手術です。この手術は、心房内に生じる異常な電気伝導を遮断するために、心房の心筋を一時的に切り、再度縫い合わせるものでありました。これにより、異常な電気伝導が断ち切られ、心房細動から規則正しい脈に回復させることが出来るようになりましたが、心筋を一時的に切り、再度縫い合わせるのには時間がかかり、出血のリスクが高いという問題がありました。近年、高周波の電流で心筋の変性壊死を作成させ、心筋を切った場合と同じ効果が得られる高周波デバイスが開発され、時間の短縮と出血リスクの軽減が得られるようになり、安全に手術が行われるようになっています。(図3、4)
手術は、僧帽弁や大動脈弁などの弁膜症や心房中隔欠損、冠動脈疾患などの器質的心疾患に伴う心房細動に対して同時手術として行われるのが、良い適応とされていますが、適切な抗凝固療法にもかかわらず心内血栓にともなう脳梗塞などの血栓塞栓症の既往がある場合や、カテーテルアブレーションの不成功例や再発例においても適応となります。
このメイズ手術は、70~90%で心房細動を規則正しい脈に回復させることが出来るといわれています。現在、高周波デバイスの開発などにより、多くの施設で行われる手術となり、更なる進歩が期待される手術です。


図3 右心房に対するメイズ手術


図4 左心房に対するメイズ手術

図3・図4 出典:Radiofrequency ablation for atrial fibrillation using only a bipolar device Hiromitsu Kawasaki, M.D., Etsuro Suenaga, M.D., Ph.D., Jun Takaki, M.D.,
Nagi Hayashi, M.D.

心室頻拍に対する手術

心室頻拍は、先に述べたように不整脈のなかで最も重篤なものです。植込み型除細動器は、除細動(心臓電気ショック)をし、突然死を予防しますが、心室頻拍の出現を抑えるわけではありません。
通常の治療として薬物治療やカテーテルアブレーション治療が行われますが、それらの治療法が無効あるいは施行不可能な場合、Electrical stormのように心室頻拍の頻回発作とそれに伴うICDの頻回作動で、他の治療法では効果が得られない場合には外科治療の適応となります。
心筋梗塞に合併した心室頻拍では、心室瘤あるいは左室壁運動異常に起因する心不全や血栓塞栓症に対する心室瘤切除術や左室形成術等と同時に心室頻拍に対しても手術を行う場合があります。

虚血性心室頻拍(陳旧性心筋梗塞に合併した心室頻拍)に対する手術

この手術の代表として、心内膜切除と凍結凝固と左室形成術を組み合わせたDor手術があります。心筋梗塞部を切り、内膜側の病変を境界部まで切り取ります。その境界部を凍結凝固した後、切除部にパッチを当て、切り取った部位を閉鎖する手術となります。これにより、心室頻拍の原因伝導路の元となる心筋が切除され、また、心筋梗塞の部位が正常の心筋から隔離されることにより、心室頻拍の発生が抑えられます。

非虚血性心室頻拍に対する手術

日本では欧米に比べ、非虚血性心室頻拍が虚血性心室頻拍に比べ、割合が高いとされ、主なものとして不整脈源性右室異形成やファロー四徴症根治術後が挙げられます。 薬物治療やカテーテルアブレーション治療が行われますが、それらの治療法が無効な場合はマッピングガイド下(電気的な検査により電気的異常部位調べる)の手術が行われます。電気的異常部位に対して心筋切開、切除、凍結凝固が行われています。

以上、不整脈の治療について概説しました。不整脈の外科治療は常に、内科的な治療と同時に進められなければなりません。上記のような治療を受けるに際しては、内科、外科の連携により不整脈治療が行なわれている施設を選択することをお勧めします。