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歴代理事長挨拶

新年のご挨拶

特定非営利活動法人日本胸部外科学会
理事長 坂田 隆造(京都大学大学院医学研究科心臓血管外科学)

 新年明けましておめでとうございます。2015年が皆様にとりまして輝かしい一年になりますようお祈り申し上げます。本年は日本胸部外科学会にとりましても大変重要な年になります。一つは新専門医制度、もう一つは学会誌GTCSのインパクトファクター(IF)獲得、です。

1)新専門医制度

理事長:坂田 隆造(京都大学医学部附属病院 心臓血管外科)

 昨年の5月に一般社団法人 日本専門医機構が発足し、新専門医制度にむけて各学会の準備が加速しています。1)日本胸部外科学会を構成する三つの専門医のうち、心臓血管外科と呼吸器外科の専門医は外科専門医を基盤とするサブスペシャルティー専門医とすること、2)外科専門医修練中にサブスペシャルティー研修の一部を履修できること(外科専門医修練中に履修した実績のうち、サブスペシャルティー分野の実績はそのままサブスペシャルティー研修実績として評価される)、3)外科専門医制での病院群は都道府県をまたがってもよく、サブスペシャルティー専門医制の病院群は都道府県を飛び越えてもよいこと、4)プログラムの移動(病院群を途中で変更すること)は、外科専門医制では原則禁止だが双方のプログラム管理委員会の承認があれば可能で、サブスペシャルティー専門医制では専攻医枠に欠員があれば可能であること、5)大学院、留学、出産・育児、療養等での一定期間の猶予を認めること、などの基本原則は確定し具体的作業を進めています。2014年7月、一般社団法人 日本専門医機構から専門医制度整備指針が示され、それをもとに同月、外科専門医評価委員会・外科研修プログラム評価委員会が「外科専門医研修プログラム整備規準(案)」を作成し、サブスペシャルティー領域ではこの整備規準(案)と整合性をとりつつ、呼吸器外科、心臓血管外科専門医研修プログラム整備規準(案)を作成しております。パブリックコメントを頂きながら、2014年10月時点で規準(案)の概略はできており、現在アンケート調査により最終のご意見を伺っているところです。会員諸氏におかれましてはこの規準(案)を是非ご覧いただいて、それに従えば、自分たちのプログラムはどうなるかをイメージして問題点、不都合な点をお知らせいただきたく存じます。
 具体的作業が進むほどに大きな関心事、ないし問題点となるのは、恐らくは専門研修施設群の形成と専攻医定員と考えられます。専門研修施設群ではどこが研修基幹施設となるのか、どの施設を研修連携施設として施設群を形成するのか、について既にいくつかの具体的な問題提起が寄せられています。それぞれの地域でそれぞれの歴史を持った施設が並存し、各施設の外科医の人事は関連大学や運営母体の連合会等の組織で執り行われている場合が多く見られます。特に、専門医の数が限られている中でチームとしてある程度の医師数が必要な心臓血管外科では医師確保が死活問題であり、病院単独で人事を執り行うにはリスクが高くなおさらです。このような背景のなかで、ある地域に並存する由緒の異なる施設群を統合して新たな修練施設群を形成するのには多くの困難を伴います。しかし重要な事は、地域の境界に壁を張り巡らし病院群をなんとしても形成してその中に専攻医を閉じ込めることではなく、研修の場を広く地域外にも求めて質の高い研修を専攻医のために担保することでしょう。そのためには、地域の基幹施設ではなくより広いエリアの施設群の連携施設となる決断も必要になるかもしれません。しかしこのことは必ずしも地域の当該診療の崩壊を意味するものではありません。自施設の医師は確保され、専攻医はプログラムの一時を他地域で学び、再び自施設に帰って研修をつづけ、専門医資格取得後はそれぞれが決める、即ち現状と同じで、異なるのは工夫次第で専攻医がより充実した研修を受けられることです。地域医療も、そこに並存する病院それぞれが外に広がる別プログラムの中で専攻医を育てつつ、これまで通り一翼を担い合うことになります。繰り返しになりますが、現状より少しでも充実した研修制度をつくり、サブスペシャルティー専門医制の質を向上させることが重要で、自施設の立場に拘るあまり制度を専攻医にとって現状より窮屈のものにしては本末転倒となります。
 定員については心臓血管外科では、現状、研修施設群の総手術数500例あたり専攻医1名(+1名)/1年の案になっています。しかしこの定員案は非常に甘く、仮にこの定員枠の最大限で受け入れるとすると専攻医の数は今の1.5~2.0倍必要で、現実的ではありません。起こり得る現象は、人気のプログラムに専攻医が集まり、そうでないプログラムでは定員割れが生じることです。だからこそプログラムの質を高めることが重要だ、ともいえますが、個人的には極端な専攻医の集中を避けるために、もう少し定員を絞る必要があるのではないかと思っています。
 我々の専門医制度の具体化作業は今年が本番です。会員諸氏からご意見を伺いながら、まず医療現場に混乱をもたらさないことを念頭に制度設計をおこない、より良い専門医制を目指して不断の改革を進めていくことが重要と考えております。

2)GTCSのインパクトファクター

 昨年の第67回日本胸部外科学会学術集会の理事長講演でお願いしましたように、本年2015年の仮IFの実績値で学会誌GTCSのIF獲得申請を2016年に行う予定です。この申請での注意点は、仮IFがいくら必要、或いはいくらなら可能という規準が不明である、毎年続けて申請はできない、の2点です。出版社によれば申請時の仮IFは1ぐらいは必要との風聞、という表現です。仮IF=1は達成不可能か?決してそんなことはありません。過去3年の上昇トレンドから2014年のGTCS論文引用回数は200回前後と予測され(毎年20~30回増加しています)、この数値をもとに計算すると2014年仮IFは0.65~0.70となります。本年2015年のGTCS論文引用回数が昨年同様の200回に留まったとして計算しても2015年仮IFは0.81となり、これは分母となるGTCS総論文数を減少させてきた結果です。今年のGTCS論文引用回数が上昇トレンド通り220回に増えたとすると、その仮IFは0.89と計算され、今年の特別努力目標としてプラス20回の引用を達成して240回になると仮IFはなんと(0.98)となります。
 昨秋、故あって日本胸部外科学会の歴史を紐解いていたところ、初代会長であった東京大学の大月菊男先生が雑誌「胸部外科」の創刊号に記された「巻頭言」にめぐり合いました。1948年に設立された本学会の第1回学術集会(第一回胸部外科研究会)での会長の言葉でも触れられており、いまなお本学会のミッションとして本質をなすものと思われるので引用します。「学会はややもすればお祭り騒ぎか、泥仕合になり易いものであるが、わが国の胸部外科学会は明朗で真摯な学会となるべきである。凡そ学術の進歩発達には各自その研究の成果を発表して忌憚なく合議し、知識を交換し、互いに相補ってゆくことが甚だ肝要なことである。只単に精通没頭しても自己の殻内に閉じこもって他を顧みないような行き方は決してその目的にそう所以ではない。この要求に応ずるものは、学会と雑誌である」。
 黒澤博身先生が会誌編集委員会委員長をされていた1998年に学会誌が英文化されたのも、恐らくはこの謂わば当学会設立時のミッションを認識されたうえでの決断であったと推測されます。現代において学術誌の質を担保するのはIFであり、ミッションは(必達目標)と和訳されます。この一年間、皆様の特段のご協力をお願い申し上げます。