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歴代理事長挨拶:理事長再選に当たっての所信

特定非営利活動法人日本胸部外科学会
理事長 坂田 隆造(京都大学大学院医学研究科心臓血管外科学)

 昨年10月に開催された第66回日本胸部外科学会学術集会(近藤 丘会長)の総会で理事長に再任承認いただき、ありがとうございました。過去2年間の経験を基に残り2年間に全力を注入したいと決意を新たにしております。

最大の懸案は新専門医制度の確立

理事長:坂田 隆造(京都大学医学部附属病院 心臓血管外科)

 今後2年間の最大の懸案は新専門医制度の確立であります。
厚労省での「専門医の在り方に関する検討会」でキーワードの一つであった「中立的第3者機関」に関して、平成25年8月6日に第1回「日本専門医機構(仮称)組織委員会」が発足しました。この日本専門医機構(仮称)のなかに各専門医委員会が連なることになりますが、実際上は現在の学会主導の各専門医委員会、例えば3学会構成心臓血管外科専門医認定機構や呼吸器外科専門医合同委員会の委員の一部ないしは全部が代表・代弁者という立場で参画することになります。
新専門医制度の骨格は(1)研修プログラム制を導入し、(2)日本専門医機構(仮称)が研修プログラムを認定し、専門医認定も行い、(3)研修プログラムを遂行する現場として研修施設群を形成する、というものです。研修施設群は大学病院等の基幹病院と協力病院で構成されますが、どの程度の規模でどのようなエリアとするかは未定です。エリアについては「研修施設としては都道府県と連携しつつ…」との文言が「在り方委員会」の答申にみられますが、2階部分、ないし3階部分の専門医制度においては症例数確保の点からこのエリアはもっと広域にする必要があると考えています。基幹研修施設は自らの研修プログラムを作成し、「日本専門医機構」で認定をうけます。更に研修プログラム責任者を置き、専門医研修管理委員会を設置し、専攻医ごとの研修実績記録を集積するシステムを構築しなくてはなりません。実際の指導に当たる「指導医」も必要で、これらの仕事量を勘案すると基幹研修施設には少なくとも一名の専門医クラスないし事務員の増員が必要になりそうです。関連施設では「指導医」の存在は必須で、研修プログラムに沿って専攻医を指導し、基幹研修施設の専門医研修管理委員会と連携する委員会を設置することになり、研修プログラムの内容密度に応じて仕事量が増加します。ところで「専門医制度研修プログラム整備指針」に謂うところの「指導医」とは何かについては指針では何も触れていません。専攻医の指導体制についても我々で考える必要があります。

サブスペシャルティの専門医研修について

 新専門医制度の骨格について、一つの懸念は整備指針に「サブスペシャルティの専門医研修は基本領域の専門医取得後に開始する。」とある点です。
現行制度では外科専門医研修中の心臓血管外科、呼吸器外科に関わる研修内容は同時に、それぞれの専門医研修の履修単位としてもカウントできる、すなわち外科専門医研修中に既にサブスペシャルティ専門医研修も進行している体裁になっています。しかし上記指針に従うとすれば、サブスペシャルティ専門医研修は外科専門医資格取得後に初めてスタートすることになり、研修年数を何年とするかにもよりますが、サブスペシャルティ専門医取得までの年数が今よりも長くなることは確かです。現行制度においても既に、専門医資格取得まで長年かかりすぎる、との批判があり、胸部外科学会としては外科専門医研修中からサブスペシャルティ研修開始という現行制度維持を日本外科学会と確約し、ともに要望していくことになりました。

新専門医制度の課題

 新専門医制度の課題としてまず考えなければならない点は、専攻医は研修期間中は研修施設群の内に留まる、即ち研修施設群からの移動が難しくなる、ということです。外科専門医研修は初期研修も入れて5年となるようですが、外科専門医の研修施設群のいずれかに参画しない限り、我々の胸部外科関連施設には卒後5年までの外科医は存在しなくなるということです。またサブスペシャルティ研修期間を3~5年と仮定すると卒後8~10年までの専攻医は研修施設群にとじ込められることになるので、専攻医が獲得できなければ年老いた専門医だけの施設となってしまいます。このような混乱を避けるために、研修施設群間での専攻医の移動を可能にする制度を設計する必要があります。
もう一つの課題は、大学院を新専門医制度にどのように組み込むか、です。指針には大学院について全く記載がありません。しかし基礎研究にしろ臨床研究にしろ、しっかりとした教育を受けることは臨床医にとっても重要なことで、降圧剤に関する臨床論文の杜撰さが明らかになった今、研究に関する教育の重要性はいくら強調してもし過ぎることはありません。大学院での研究を保障し、推進させる手だては、自己申告による研修猶予年数を認めることでしょう。こうすることによって多様な大学院制度に対応することができると考えます。

研修プログラム整備指針

 研修プログラム整備指針では、プログラム評価体制整備の一環として指導医と専攻医による双方向の評価が謳われています。指導医が専攻医を評価するのは当然としても、新制度では専攻医が指導体制を評価することが加わります。このようなフィードバック機能を担保することによって研修の質を高めようというわけです。このような制度では必然的に研修施設群の質の評価が浮かび上がってきます。質の評価とは手術成績を含めた診療内容、教育、学術活動、の評価であり、これらの仕事は日本専門医機構の一組織である各専門医委員会が研修プログラムの認定作業を通して担うことになります。評価の資料としては、研修プログラム責任者からの報告の他に日本胸部外科学会学術調査、JACVSD、NCDのデータ等が考えらえます。このことは非常に重要な一大変革で、日本の医療のパラダイムシフトと言っても過言ではありません。新専門医制度への歩みはまさにその変革への途上であることを自覚しなくてはならないと感じています。

GTCSのIF獲得について

 最後に日本胸部外科学会雑誌(GTCS)のImpact Factor獲得について、改めてGTCS論文の引用をお願い申し上げます。会誌編集委員会の精力的な活動のおかげで仮IFは着実に増加してきております。GTCSは日本呼吸器外科学会のofficial journal、日本心臓血管外科学会のaffiliated journalにも指定され、胸部心臓外科領域の日本を代表する唯一の英文誌との位置付けになります。会員諸氏のご支援を心よりお願い申し上げます。