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歴代理事長挨拶

特定非営利活動法人日本胸部外科学会
理事長 田林 晄一
東北厚生年金病院 病院長

理事長:田林 晄一(東北大学大学院医学系研究科心臓血管外科)

 日本胸部外科学会は1948年に開設されて以来60年もの間、胸部外科学の発展に大きく貢献してきたことは周知の事実です。胸部外科学の進歩による多くの重症疾患の救命、また患者にやさしい手術法の積極的応用などにより、わが国の胸部外科学の治療成績およびレベルは欧米と比肩できるほどになり、疾患によってはより優れた成績が得られる状況となってきています。しかし、胸部外科を取り巻く環境、また胸部外科のおかれている立場に目を移すと、課題が山積した厳しい状況にあり、その対応と改善が肝要な時期となっています。このような時期に日本胸部外科学会の理事長にご選任いただき、その重責に己の力量を問う思いでございます。
胸部外科学会に対する私の基本理念は、心臓血管外科、呼吸器外科および食道外科に関連する胸部疾患を扱う総合学会としてその特徴を充実させ、学会員の期待に答えることを主眼としております。この基本理念は松田前理事長が最も重要にしてきた事で、私もその理念を踏襲していく事を第一義と考えています。この基本理念の実現に当たり、1)教育、2)専門医制度、3)学術調査、4)胸部外科医の処遇改善、5)国際交流、6)定期学術集会の面から所信を述べさせていただきます。

  1. 教育について:心臓・大血管・肺・食道は主たる胸腔内臓器で、解剖学的に隣接しており、手術の施行にあたってはそれぞれの解剖学的特徴、生理学的および薬理学的反応を理解する必要があります。このような観点から、本学会のPostgraduate course、ハンズオンセミナーを通して、互いの知識を共有する機会を設けていくことは非常に有意義であると考えています。また、今後は専門医取得前の修練医を対象として、3科でのローテーションプログラムを胸部外科学会主導で構築していくことも教育内容を充実させていく上で効果的であると考えております。
  2. 専門医制度について:心臓血管外科専門医および呼吸器外科専門医は、3学会合同構成心臓血管外科専門医認定機構と呼吸器外科専門医合同委員会が中心となり、それぞれの規約が作成されて、その内容は徐々に充実しつつあります。専門医の申請条件、更新条件は重要ではありますが、特に新たに専門医を取得する修練医の教育がどのように施行されているかが大きなポイントであると思われます。その観点から、心臓血管外科専門医認定機構において手術経験症例の登録制度が検討されていることは大変興味深く、今後の進展に注目しております。今後、この登録制度を充実させていく上で重要なのは、その登録結果を修練施設に反映させることであり、このようなシステムの構築も平行して検討すべきであると考えます。
    また、専門医の取得と大学院入学等による研究との両立に悩んでいる修練医への対応も重要で、今後、異なる専門医取得プログラムの構築等について考える必要があると思われます。
  3. 学術調査について:わが国の疾病に対する治療成績を全国的レベルで把握、分析し、その結果を公表することによって治療成績の向上につなげていくことは、各学会が負うべき任であると考えます。既に日本胸部外科学会では、心臓血管外科、呼吸器外科、食道外科の3分野でデータの収集と分析を施行してきました。特に心臓血管外科分野においては成人症例を対象にデータベース化を進め、その結果をふまえて施設集約化の必要性などを提言していく予定となっています。このような学術調査にはある程度の学会の規模と人員が必要で、今後さらに学術調査を進めていく上で、日本胸部外科学会が担うべき役割は重要であると考えています。近い将来、先天性心疾患分野においてデータベース化が施行される予定であり、今後は呼吸器外科、食道外科分野でもそのシステムを検討していく必要があると思われます。得られたデータは、国民およびマスコミの医療に対する偏見・誤解の払拭、施設集約化、勤務医の処遇改善に大いに役立つと考えています。
  4. 胸部外科医の処遇改善について:重要事項であり、その実現に当たっては(1)「医療の分業化」の進展を基点とした医師の労働生産性の向上、(2)施設の集約化、(3)国民の医療への誤解の解消、マスコミの医療に対する偏見の払拭を目的とした“医療の質”の可視化、(4)医療技術評価の正当性、(5)医師の医療政策に対する関心度の向上および政治家への啓発活動に基づいた医療政策への積極的参加等について検討していく必要があると考えています。
  5. 国際交流について:日本胸部外科学会の更なる活性化を図るためには国際学会(AATS、STS、ECTS、ACVS)との教育、研究面での交流も重要と考えます。教育面ではPostgraduate Course、またハンズオンセミナーの講師依頼、派遣等を第一に考え、研究面においては多施設を対象としたprospective randomized studyを計画し、学会が主軸となって計画の立案、資金確保、実施施設の選択等を推進していく事を考えています。
  6. 定期学術集会のあり方:定期学術集会は今年で第60回を数え、これまで幾多の変遷を積み重ねてきました。日本胸部外科学会にとって定期学術集会は最大の事業であり、その活性化は最重要課題です。従来、学術集会のあり方は演題採択を除き会長の専任事項とされてきましたが、近年、学術集会委員会との協議を重ね、様々な意見を下に構成されるようになってきています。これは大変望ましい傾向で、会員にとって魅力ある学術集会を作り上げるためにはプログラム原案の早期作成、それに基づいた学術委員会等との意見交換を行っていくべきと考えます。また、今後は日本胸部外科学会と関連する日本心臓血管外科学会、日本呼吸器外科学会、日本食道学会、日本消化器外科学会とも連携し、学術集会のあり方について検討し、それぞれの個性を生かした学術集会を構築していく必要があると考えています。

 理事長としての最大の役目は、会員の方々の信頼と満足感を得て貰う事と思っております。その実現に向けて私に課せられた命題は多々あると思いますが、上述の案を中心に皆様のご協力の下に励行していきたいと考えております。